SAPジャパン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:福田 譲/以下、SAPジャパン)、株式会社日立製作所(本社:東京都千代田区、執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)、GIS(地理情報システム)ソフトウェア国内最大手のESRIジャパン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:正木 千陽/以下、ESRIジャパン)は、このたび、3社の製品を連携させ、社会インフラに関する将来予測を可能にするビッグデータ利活用システム基盤(以下、本システム基盤)を開発し、実用化に向けた検証を実施しました。
本システム基盤は、社会インフラに関する膨大な現在と過去のデータをもとに、特定区域の混雑状況の予測など、さまざまな将来予測を迅速に行い、地図画面上で瞬時に可視化できるものです。今後3社は、本システム基盤の実用化に向けた取り組みを推進し、広域都市交通や物流の効率化、水道・電気・ガスといったインフラ設備の安定稼働など、安全・安心・快適な社会インフラの実現に貢献します。
近年、あらゆるモノがインターネットを介してつながるIoT(Internet of Things)などITの新たな潮流が生まれ、センサーやカメラなどから収集した多様かつ膨大なデータの活用によって新たな価値が生み出されつつあります。社会インフラ分野においても、交通渋滞の抑制や広域な物流業務の効率化、インフラ設備の安定稼働など、ビッグデータの利活用により安全・安心・快適な社会を実現する新たなサービスの創出が期待されています。
こうした背景のもと、SAPジャパンと日立、ESRIジャパンは、本システム基盤の開発・検証プロジェクトを、SAPジャパンの共同研究施設である「SAP Co-Innovation Lab Tokyo」にて実施しました。
今回のプロジェクトでは、インメモリデータベースによるリアルタイムなデータ処理に優位性をもつ「SAP HANA®」と、日立の超高速データベースエンジン「Hitachi Advanced Data Binder」(以下、HADB) *1、企業における地理空間情報を活用した意思決定を支援するESRIジャパンのソフトウェア「ArcGIS」*2*3の3製品を連携させ、将来予測を行うとともにその結果を地図画面上へ瞬時に表示するシステム基盤の開発・検証を行いました。 具体的には、「SAP HANA」を用いて「HADB」に蓄積された膨大なデータを高速に処理するため、両製品の連携を実現するソフトウェアである「連携アダプタ」を開発し、「SAP HANA」のSDA*4機能と組み合わせることで、3製品がスムーズに相互連携するシステム基盤を構築しました。
また今回、「SAP HANA」に格納した現在の状況に関するデータと「HADB」に蓄積した履歴データを活用した将来予測を行い、現在の状況と将来予測の結果を「ArcGIS」の地図画面上で瞬時に表示できることを検証しました。検証にあたっては、東京大学空間情報科学技術研究センターが提供する、約130万人分の移動履歴とその交通手段に関するデータ(人流データ)*5を活用し、タクシーの最適配車を想定したシミュレーションを実施しました。具体的には、まず、東京首都圏のある特定日時における人流データを現在の状況と仮定し、そのデータをもとに「SAP HANA」で「現在の混雑箇所」を把握します。そして、現在の混雑箇所から数十分後に移動する可能性が高い複数地点を、「HADB」に格納した膨大な履歴データの中から統計的に導き出すことで将来予測を行いました。これらの結果を「ArcGIS」の地図画面上に高速に表示することができました。
*1 Hitachi Advanced Data Binderは、内閣府の最先端研究開発支援プログラム「超巨大データベース時代に向けた最高速データベースエンジンの開発と当該エンジンを核とする戦略的社会サービスの実証・評価」(中心研究者:喜連川 東大教授/国立情報学研究所所長)の成果を利用しています。
*2 ArcGISは、Esri社が提供するGIS 製品、サービス群の総称です。今回の高精度な予測結果の可視化には、クラウドサービスであるArcGIS Onlineを採用しました。ArcGIS Online では、背景地図やデータコンテンツを自由に変更することができるほか、様々なデバイスに対応しています。GISデータを可視化するツールでありながら、同時にGUI ベースでWebアプリケーション作成機能を備えており、設定のみでアプリケーションを構築、公開することが可能です。
*3 Esri社では、ArcGIS においてSAP HANAのSpatial 機能の接続をサポートしているため、SAP HANAでリアルタイムに分析した空間情報を地図上に表示することが可能です。日本国内でもサポート予定です。
*4 SDA(Smart Data Access)は、SAP HANAにおけるデータ仮想化技術の1つで、異種のデータが混在するリレーショナルおよび非リレーショナル・データベースシステムに対する動的なクエリーを実現します。本機能により、SAP HANAプラットフォームが持つパワーを、データ仮想化の世界にも適用し、異種混在データソースへのクエリーを簡素化するとともに、データの保存場所や用途に基づいて、その応答時間を最適化することが可能となります。
*5今回の技術検証は、東京大学空間情報科学研究センターとの共同研究プロジェクト「人流データを利用したタクシー配車効率化に関する研究」として、同センターが個人を特定できないように加工して提供している人流データを使用しました。
2015年11月12日にザ・プリンスパークタワー東京にて開催されるSAPジャパン主催の「SAP Forum Tokyo 2015」において、今回の検証をベースにしたタクシー配車デモを、日立のブースにて紹介します。
www.sap.com/japan/pc/tech/in-memory-computing-hana.html
www.hitachi.co.jp/data-binder/
www.esrij.com/products/arcgis/
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